コピーライティングにもAIを積極的に活用しようとする動きがありますが、生身の人間にしかできない従来のコピーライティング手法が今必要だという話をします。
Adworldシリーズ、コンテンツクリエイターのタウニー・アン氏による ”Discover the Most Powerful Persuasion Copywriting Techniques to Dominate any Market (あらゆる市場を制する最強の説得力あるコピーライティングテクニックを発見しよう)” という講演を少しレポートになります。
ざっくりまとめると、
この流れで顧客の声をよく聴くためのステップがメインとして説明されていたんですが、実際のクライアントの文言例などが出てきたのがよかったです。
人々の広告疲れは深刻
これまでもWeb広告は嫌われ者として扱われていましたが、その状況はより顕著に。 スピーカーは色々データ出されていましたがその一つを紹介すると、Hubspotによると91%が広告を押し付けがましいと感じているとのこと。(Hubspot)
Facebookなどのソーシャルメディアのおかげで簡単に自動的にターゲットにアプローチできるようになった。その影響で多くのマーケターが顧客のLTVよりもROAS(広告費の費用対効果)にフォーカスしている。顧客のことは考えなくても勝手にリーチしてくれますもんね。
しかし、今プライバシーファーストの時代がきている。
プライバシーがちゃんと管理できていない企業は選ばれなくなっている。例えば2021年iOS14の出現で広告トラッキングが制限できるようになり、ターゲットにアプローチしづらくなりマーケティングコストは明らかに上がった。
今こそ原点に戻って顧客のLTVを考えるべき。
広告に頼れないなら、とにかくコンテンツを魅力的にするコピーを自分で作らないといけない。そのためにはしっかりペルソナを設定してVoice of Customer: VOC(顧客の声)をよく聴き、顧客の痛みを理解し、適切な解決法を提示することが必要。
スピーカーは、ペルソナ設定とVOCの活用でいつも25%はコンバージョン率を上げているとのこと。
ROIメソッドで顧客を徹底的に理解しよう
この流れに沿って進めていきます。
Research(リサーチ)
Organization(整理)
Implementation(実装)
Research: リサーチフェーズは一番大事!
90%がリサーチ、残り10%がライティング。
リサーチにはいろんな方法があるがスピーカーは以下をやっている。
- インタビュー、フォーカスグループ(グループディスカッション)ー顧客とダイレクトに会話できる
- 少なくとも5人の顧客にインタビューor3フォーカスグループするのがおすすめ
- フォーカスグループはLovers(あなたのめちゃくちゃファン)ーブランドの何が好きなのか・価値が見える/ Crushes(あなたを知っているがまだ購入するきっかけがつかめない)/ Heartbreakers(全くあなたから買わない)にわけられるー反対意見や疑いが見える
- アンケートー定量的&定性的データの両方を集められる、厳しい意見をもらえる
- 顧客向けに少なくとも年1回は送る
- レビューマイニングー自分のブランドだけでなく、他社のレビューもマイニングできる
- yelp, trust pledge, trustpilot, amazon, tripadvisor, たまにgoogle
- 何を見るか?
- なぜあなたから買っているか
- 気付かなかった顧客の期待値見つける
- 具体的な顧客の痛みなど
ここまでで膨大なVOC情報を得ているはず。アイデアやコンセプトを考えることはAIにはできません。手作業に代えられないので時間をかけてやっていきます。
Organization: 整理フェーズで特に大事な声を見極めよう
集めたVOCを一つのドキュメントにまとめる。
- 重複するもの
- 大事な特徴・価値
- 反対意見や疑念
ここではリモートワークの女王、リビア・ジョーンズという方のVOCデータを公開していました。「未経験でリモートワークができるとは思わなかった!」など、すぐコピーに引用できそうな言葉もたくさん。たくさん集めて大事なものだけをハイライトしていく。
こういったVOCを集めるには質問内容がとても大事ですが、例えば「新しい商品のアイデアを教えて」という質問はたくさんの良いアイデアを集めたようです。「あなただったらどうするか」など顧客が考えて答えを出すような質問はぜひ入れたいですね。
Implementation: 実装フェーズでコピーを作成しよう
ここまでで顧客の期待値がわかったので、次はどう実際にアクションに移していくかを考えていきます。
まず必要なのは、自社プロダクトに対して顧客がどこまで認識しているかを定義すること。名コピーライターとして知られるユージン・シュワルツが定義した5つのステージに当てこみます。
- Unaware(無自覚)見込み客は解決すべき課題に気づいていない状態
- Problem Aware(課題意識)見込み客は具体的な課題を抱えており、解決策を探している状態
- Solution Aware(解決策意識)見込み客は解決策を知っているが、まだ色々見て探している状態
- Product Aware(製品意識)見込み客はあなたの製品を知っているが、まだコンバージョンには至らない状態
- Most Aware(とても意識)見込み客はあなたの製品とその機能を知っているが、まだ購入していない状態
目指すのはMost Awareの状態。Unawareに近いほどより多くのコピーが必要ということになります。
顧客の状態を確認した上で、次は実際のコピーを作成していきます。
スピーカーがよく使うコピーライティングの方式として2つの手法を紹介していました。
コピーライティングの基本で知られるAIDAの法則
一つはAIDA。こちらは有名ですね。
Awareness: 認知
Interest: 興味
Desire: 欲求
Action: 行動
最初の一文が最も大事です。Awarenessで魅了するコピーでないといけません。そして最後にCTAを置きます。
顧客の強いペインを代弁するPASの法則
もう一つはPAS。
Problem: 問題
Agitation: 動揺
Solution: 解決策
こちらは具体的な問題(見込み客の持つペイン)を提起して、最も強いペインを感情的に表現することで煽るというか動揺させ、最後に解決策を見せてあげるという流れです。より鮮明にペインを表現することで見込み客は「わかってくれてるんだ!」と最終的には信頼が生まれます。ただ煽る部分はやり過ぎに注意。
これらに沿ってコピーを当てこんでいきます。
事例では、無料PDFダウンロード後のメルマガの文章をAIDAに沿って作っていました。見込み客はPDFダウンロードしているのでProblem Awareの状態。そこからできるだけMost Awareに引っ張っていくためのメールです。VOCをそのまま使うことでストレートにベネフィットがわかる文章になっていました。
コピーができたら終わりじゃない!テストを繰り返そう
大事なのは作ったコピーを検証すること。ABテストやユーザーテストを繰り返し行っていきます。本当に今のコピーが一番いいのかはテストしないとわかりません。
例えば、コンバージョン改善の専門家マイケル・オーガーのテスト事例。(※この事例はWeb上で公開されている内容なので書きます。)
情報入力フォームでマイクロコピーを追加しました。
“100% privacy – we will never spam you!”
「100%プライバシー – 絶対にスパムを送りません」
しかし結果は18.70%コンバージョン率が低下しました。
Best Practices in Conversion Rate Optimization Debunked
そこで以下のようにコピーを変更。
“We guarantee 100% privacy. Your information will not ne shared.”
「100%プライバシーを保証します。あなたの情報は外に漏れません」
Best Practices in Conversion Rate Optimization Debunked
これが19.47%コンバージョン率を上げる結果となりました。
ほとんど同じコピーに見えますが、言葉の選び方でこれだけ結果が変わるというのがわかる事例です。仮説としては、「スパム」という言葉を見込み客が予想しておらず面食らったのではと考えられます。見込み客の言葉、つまりVOCを使うことが大事であるということですね。
まあ、、私的に今はスパムという言葉でもいけそうな気がします。カナダにきて驚いたことの一つが、めちゃくちゃスパムがくることw メールはそうでもないですが、電話はほぼ毎日きますw
どこかで電話番号を入力してしまったら次の日からスパムの嵐。
話が少し逸れましたが、つまり今現在の狙った見込み客の状態を把握して、彼らの言葉を選定することが大事ということです。
このように原点に立ち返ってROIの流れに沿って顧客の声VOCを使っていく。それが今の人々の広告疲れに打ち勝つための一つの策です。こちらも一度やったら終わりでなく、毎年・毎月定期的にやっていくのが求められます。
さいごに
今はAIが注目を浴びていますし、Facebookなどの自動広告はとても便利です。でも、見込み客の話をじっくり聴いて心に刺さるコピーを作るのは生身の人間にしかできないこと。自動化が騒がれる今だからこそ、従来の方法に立ち戻って見込み客を深く理解する必要があるのではと思います。
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