「世界的なスターであるリアーナは、コンテンツを上手く利用して爆発的な人気を得ている優秀なマーケターだ。そしてその方法には6つのポイントがあり、他のブランドや全く異なる業種でも応用できる。」
このように主張するのは、コンテンツマーケティング会社「Aha Media Group」の社長であるアハヴァ・ライブタグ氏。彼女は20年以上のマーケティング経験があり、政府機関のコミュニケーションストラテジストとしても活躍しています。
世界最大級のコンテンツマーケティングカンファレンスContent Marketing World 2023での講演「Shine Bright Like a Diamond: 6 Content Marketing Lessons from Rihanna(ダイヤモンドのように輝こう。リアーナから学ぶ6つのコンテンツマーケティングの教訓」について要点をまとめます。
結論からいうと、コンテンツマーケティングを実践している人にとっては新しい情報というよりも、改めて大事なポイントとして記憶しておくためにリアーナをベースに考えるのはいいなと思いました。意識していそうで抜けがちなポイントもあるので。
私個人的に「おっ」と思ったのは、この講演のコンセプトですね。コンテンツマーケティングのポイントをリアーナを軸として語るのは新しく、実際にカンファレンス全体の中で人気講演としてTop3に入っていました。
講演は企業事例なども挙げられていて理解しやすかったです。なるべくわかりやすい日本語で少し解説を加えながら紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
【リアーナが成功する6つのポイント】
世界的に有名な歌手リアーナは、予想外のパフォーマンスやファッションで絶大な人気を得ていますよね。
例えばアメリカンフットボールイベント「スーパーボウル」のハーフタイムショーに出演した際には、パフォーマンスの最中にステージ上で数秒化粧直しをしただけで、彼女のコスメブランド「Fenty Beauty」の売り上げが12時間で560万ドル(約8億円)を達成しました。
また「SAVAGE X FENTY」というランジェリーブランドも手がけていて、こちらは約360億円の資金調達を行っています。
リアーナはなぜ歌手としても経営者としても成功するのでしょうか?ただ単純に運や知名度があるからだけではありません。
以下6つのポイントを押さえた効果的なコンテンツマーケティングを行っているからです。
リアーナから学ぶコンテンツマーケティング6つのポイント
①ターゲットとの「知識のギャップ」を埋めよう
②意外なコラボで認知度を上げよう
③真実を伝えて信頼を得よう
④「ビジュアル」を使って理解度を上げよう
⑤親近感を持ってもらおう
⑥大胆に楽しんで切り込もう
これは他ブランドや企業にも応用できる内容ですので、1つずつ解説していきます。
①ターゲットとの「知識のギャップ」を埋めよう
ターゲットとマーケターの知識には差があります。
マーケター自身が良い商品であることを理解していても、ターゲットが同じ知識レベルを持っていなければ、良い商品だと認識されません。この「知識のギャップ」が何かを理解し埋めることで、商品を選んでもらえるようになるのです。
リアーナは「Fenty Beauty」というコスメブランドを立ち上げており、2020年の売上高は約680億円を超えています。
「Fenty Beauty」は「世界中の女性を対象に」というテーマを掲げ、従来10数色程度しか展開されていなかったファンデーションのカラーバリエーションを一気に40色用意したことで爆発的な人気を得ました。
ここまで売れた理由は、リアーナが消費者に対して商品選択のための知識を提供したからです。
日本もそうですが、「Fenty Beauty」は実店舗がない国でもオンラインで商品を購入することができます。ただオンラインだと、どの色・どの製品を選べば良いか分からないという問題が生まれますよね。40色もあればなおさらですよね。
この問題を解決するために、リアーナはオンライン上で専門家に相談できるチャットサービスを提供したり、コスメの使用方法について解説する動画を作成したりしました。
その結果、正しい知識を身に着けたターゲットが続々と商品を購入するようになったのです。
実際にFenty Beautyの動画を見てみて、「ブライトナー」という商品を知りました。部分的にツヤ感が出せるコスメで、日本では見たことがありませんでした。動画では、塗り方や塗る部位が紹介されていたり、アジア系の方に塗った映像もあったり、使用感のイメージがわりと見えました。
②意外なコラボで認知度を上げよう
リアーナは意外な人物とコラボすることが多いです。
元Beatlesのポールマッカートニー、ラッパーのカニエ・ウェストと3人で曲を発表したり、アメリカの超人気ラッパーエミネムともコラボしたりと、その度に大きな話題を生んでいます。
コラボは双方のブランドのファンをターゲットにできるため、リーチ拡大には非常に効果があります。
これを利用してヒットしたのが「バービー」と「オッペンハイマー」という映画です。
映画会社は、着せ替え人形であるバービーをテーマとした「コメディ」と、原爆の父と呼ばれたロバート・オッペンハイマーをテーマとした「シリアス」の、全く違うジャンルの映画を全米同日公開することで、2作品ともハシゴして観よう!というムーブメントを作り出しました。
その相乗効果により2作品は大ヒットし「バーベンハイマー(バービー+オッペンハイマー)」という造語まで流行ったのです。
ただバーベンハイマーは、「原爆で亡くなった人のことを考えていない」と日本では炎上しました。コラボすることで不利益が生じないかは、よく考える必要があります。プラスの相乗効果を目指して、自身のブランドのどこに意外な組み合わせがあるのか考えてみましょう。
③真実を伝えて信頼を得よう
あなたはコンテンツで真実を伝えていますか?
発信者でこの言葉が刺さる人は多いのではないでしょうか。コンテンツを発信していると、どうしても良い部分だけアピールしたい、という気持ちが出てくると思います。
ただそれでは信頼を勝ち得ることは出来ません。
リアーナは妊娠しているときも、お腹が目立つような衣装を着たり、授乳用ブラジャーを発売したりと、自分の生き様を隠さない姿勢を貫いています。
作り物ではない、本当の自分を見せようとする姿が、彼女の言動の信憑性を高めているのです。
ノルウェーに「ホルマン」という製紙会社があります。
ホルマンは自社で生産している紙製品が環境問題の一因を担っていることを理解しており、それを世間に隠さず伝えていかなければいけないと考えていました。
そこで、自分達が行った製紙によって発生したCO2排出量を人々に伝えることにしたのです。
What’s the carbon footprint of one magazine?
Carbon Footprints
正直に事実を伝えることで、ホルマンは環境問題を受け止めてCO2排出量の削減に向けて努力していることをアピールしました。
自身にとって不利益な情報だとしても、隠さず伝えることで信頼を勝ち取れることもあります。ブランドの魅せ方と本来の姿に乖離がないか、真実を伝えているかは本当に注意するポイントですね。
④「ビジュアル」を使って理解度を上げよう
ターゲットに主張を理解してもらうためには、わかりやすいビジュアルを取り入れましょう。
アメリカンフットボールのハーフタイムショーでリアーナがパフォーマンスしたとき、彼女は全身真っ赤な衣装でした。他のバックダンサーは全員が真っ白の服装です。
これは10万人いる観客が、どこにいても視覚的にリアーナを認識できるよう考えられた対比です。
では、実際の企業はどのようにビジュアル効果を活用しているか紹介します。
105億ドルを売り上げる経営コンサルタント会社「マッキンゼー」は、自社のウェブサイトで世界の食糧問題について取り上げました。
まだ食べられるはずのトマトの半分程が、規格外や生産余剰で店頭に並ばない現状について説明している資料です。トマトの割合を図で表しており、文章だけの説明よりも頭に入ってきやすいです。
Reducing food loss: What grocery retailers and manufacturers can do
コンテンツとして文章は大事ですが、視覚にも訴えることでより理解してもらいやすくなります。
⑤親近感を持ってもらおう
自分のブランドを愛してもらいたいなら、まず自分からターゲットに寄り添い、ターゲットが本当に求めているモノを提供する努力が必要です。
例えば、クローン病や大腸炎は慢性的に腹痛や下痢の症状があるため、トイレがどこにあるかで1日の予定を立てる人もいます。
そこで、Crohn’s & Colitis Foundation(炎症性腸疾患協会)はトイレに関するアプリを作成しました。
そのアプリでは現在地からトイレを探したり、追加したりすることができ、さらにトイレの順番を譲ってもらうためのデジタルカードを表示させることもできるのです。
ターゲットに親近感を持ってもらうためには、まず私たちがターゲットのことを理解し歩み寄らなければいけません。
⑥大胆に楽しんで切り込もう
最後は、リアーナが大胆なパフォーマンスで観客を楽しませるように、思いっきり大胆なアイデアを楽しみましょう!
Crohn’s & Colitis Foundation(炎症性腸疾患協会)では、「PoopUp(ウンチアップ)」というイベントを各地で開催しており、病気の認知向上に努めています。
青いウンチの形をしたバウンスハウスが目印で、「楽しく学べる」をコンセプトとしており、子供から大人まで、病気について理解を深められるイベントを行っています。
青いウンチはだいぶインパクトがありますが、その分印象にも残りますよね。
The Foundation presents: A PoopUp Experience
どんなコンテンツでもターゲットがワクワクするような内容でなければ意味がありません。
人の心を動かすような大胆不敵なコンテンツを制作しましょう!
さいごに
リアーナをベースにコンテンツマーケティングのコツを語るのは面白い切り口でした!解説としてはライトでしたが、コツを頭に記憶しておくという観点ではいいコンセプトだと感じます。私もこの6つのコツを常に意識してコンテンツを考えてみようと思います。
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